刺すヒアルロン酸コスメって?

  1. コスメの成分

ヒアルロン酸パッチについて

最近よく目にするヒアルロン酸パッチ。マイクロニードル、とも呼ばれていますね。人差し指くらいの大きさのシールに、極細の、こまかい針(と言うか、ザラザラする程度の突起物)がついていて、皮膚に貼る、という化粧品です。針(突起物)自体がヒアルロン酸でできていて、角層内ですべて溶けきるように作られています。何か金属の針が残るんじゃないか、という心配は要りません。目元や眉間、ほうれい線に貼り付けている広告、ネットでも流れてきますよね。一体、これは効くのかどうか、RITSUKOなりに考えてみました。

ヒアルロン酸パッチの針の長さって?

長さ50ミクロンと書いてある販売サイトがありました。50ミクロン?と聞くと長いのか短いのか一瞬では分からないわけですが、50ミクロン=0.05mmです。また、他の販売サイトでは長さ0.02mmと書いてあるサイトもありました。「化粧品は角層で働くもの」と薬機法で決まっています。なので、顔のほとんどの部位では角層よりも深くは入らないようです。さて、ここで皮膚構造を見てみましょう。

表皮はおよそ0.2mm程度(部位によっても、その人の皮膚の厚みによっても異なります)です。表皮の最も上の角層の厚さは0.02mmです。ヒアルロン酸パッチの針の長さが0.05mmだと、あらら、角層を超えちゃうこともあるのか・・・。と、思いきや、ヒアルロン酸の針は湿気にすごく弱いので、角層内を通り、その下まで到達することはないと考えます。上の図に書いてあるように、本来、皮膚をふっくらさせるヒアルロン酸は「真皮」に存在します。残念ながら「ヒアルロン酸パッチ」は、そこまでは到達しません。ただし、普通のコスメに含まれているヒアルロン酸は角層の上にとどまることしかできませんが(ヒアルロン酸の分子が大きいため角層内に入り込めない)、ヒアルロン酸パッチだと、角層にヒアルロン酸を押し込むことが可能です。

ヒアルロン酸パッチは痛い?

シールを貼るようにして、皮膚表面に「針を押し込む」のですが、「チッ」くらいの痛みです。一瞬で痛みは治まり、ヒアルロン酸でできている針もすぐ溶け始めます。穴の跡が残るようなこともありません。

塗るヒアルロン酸との違いは?

ヒアルロン酸が含有された化粧品って多いですよね。特に化粧水に多い印象があります。ヒアルロン酸は1gで6リットルの水分を保持してくれるので、非常に優れた保湿成分です。しかし、ヒアルロン酸の分子量は100万ダルトン、低分子ヒアルロン酸(アセチルヒアルロン酸)で1万〜10万ダルトンです。皮膚は500ダルトン以上の大きな物質は通過できないので、化粧品のヒアルロン酸は皮膚には入らず、皮膚の表面で水分を保持してくれているのです。ヒアルロン酸パッチであれば、角層内にまでは針が入るので、角層内の水分保持に役立つと言えるでしょう。

ヒアルロン酸パッチの効果は?

潤いを求めておられる場合であれば効果はあると思います。ただ、1週間に1回程度の使用であれば、ヒアルロン酸含有の化粧水を毎日朝晩使用する方が継続して水分を保持してくれると考えます。角層内にまで水分を入れ込む必要はないからです。角層の上で水分の膜を張るだけで充分なのです。

ただ、多くの方がヒアルロン酸パッチに求めておられる効果は、ヒアルロン酸注射のようなイメージ、あるいはボトックスのようなイメージだと思います。ふんわり膨らませる、や、ピンと張った皮膚になる、などの効果を求めておられることが多いのではないでしょうか。では効果を感じることができるのか、部位によって効く効かないが分かれるのかを見て行きましょう。

眉間のシワは「動かすことでできるシワ」。PC仕事や夜寝ているときの癖、怒ることの多い人も・・・。ヒアルロン酸パッチは、動かすことでできるシワには効果はありません。動かすことでできるシワは「動かさない」ことでシワを止めることができます・・・、つまりボトックス。美容皮膚科でも、眉間のシワの第一治療はボトックス。ヒアルロン酸の注射でさえ補助的なものです。なので、眉間に貼るのはほぼムダなのでもったいない。眉間に貼るのはやめましょう。

では、ほうれい線は?ほうれい線は「線状のシワ」と「たるみシワ」に分けられます。頬と口元に「段差」が出来ているほうれい線、それは「たるみシワ」。たるみは持ち上げないと改善できません。つまり、美容皮膚科でゼリー状のヒアルロン酸を注射して段差をなくすか、糸治療で引き上げるか、機器での熱治療か、手術が必要になってきます。ほうれい線が「薄い線状のしわ」、特に乾燥肌の方のシワであれば、ヒアルロン酸パッチで薄くなる可能性があります。要するに角層に水分を保つことで弾力が戻るからです。しかし、永遠に「刺すヒアルロン酸パッチ」を貼り続けるくらいなら、お手入れを油分多めのクリームに変えるだけでいいかも。レチノール(ビタミンAの一種)が入っているクリームなら、小皺は減ってくるし、皮膚にハリも出てくるし、顔全部に塗れるし、毎日塗れるし、、、と、ヒアルロン酸パッチは不要かと思います。肌が乾燥していないのに出る「線状の薄いシワ」は、たるみの始まりか、笑いシワ。どちらにしろ、ヒアルロン酸パッチの効かないシワです。

目元は?実は目元がもっとも効果が見込めます。目元の角層の厚さは0.02mmほど。0.05mmのヒアルロン酸パッチだと角層にヒアルロン酸が行き渡りそうです。目元の小じわを隠したい日の前夜に使うと効果があるかもしれませんね。そうそう、ショワショワした小じわには効果はあるかも知れませんが、目尻の笑いシワには効果はありません。「笑う」=「動かす」ことによってできるシワに効くのは、眉間のところで書いたように、ボトックスです。

ヒアルロン酸パッチと、注射のヒアルロン酸の違いは?

ヒアルロン酸パッチに含まれているヒアルロン酸は「非架橋ヒアルロン酸」、美容皮膚科で注射に使われるヒアルロン酸は「架橋ヒアルロン酸」です。「架橋」とは、ヒアルロン酸同士を結びつけて吸収されにくい構造に加工することを言います。なので、注入に使う架橋ヒアルロン酸は数ヶ月から1年以上持続しますが、ヒアルロン酸パッチでは非架橋ヒアルロン酸が使われており分解されやすい上、角層は毎日剥がれてくので1日効果が持てばいい方だと思います。目元の角層を潤す力はありそうですが、ごくごく短期間でしょう。(だったら、水分を逃さない油分の多いクリームか、リンクル〇ョット、レチノールなどを選ぶよ、RITSUKOは・・・)美容皮膚科で注入に使う架橋ヒアルロン酸は、ゼリー状で皮膚を持ち上げる力があります。シワや凹みの下(真皮深層から皮下組織)に注射します。性質も違うし、入る層も違うんです。

ヒアルロン酸パッチ貼るくらいなら、美容皮膚科でボライトを注入しよう

RITSUKOはアラガン社の回し者ではありませんが、おもしろいヒアルロン酸が発売されました。ボライトと言います。皮膚の真皮深層(まさに本来のヒアルロン酸がある位置!)に、めっちゃ細かく注射します。顔中に打つことが可能です。そしてボライトは「架橋」ヒアルロン酸なので、1回注射すれば9ヶ月以上持続すると言われています。すぐに剥がれていく角層にヒアルロン酸パッチを貼るくらいなら、溶けにくいヒアルロン酸を顔全体の真皮深層に打てば、本当のふっくら肌が手に入るわけですよ・・・。コストパフォーマンスもいいと思います。

ヒアルロン酸パッチのデメリットは?

「貼る」ということで、テープ成分で肌荒れが起こることが考えられます。特に効果が持続しないため、週に何回も貼る行為を続けると、「剥がす」行為で肌荒れを起こすこともありえるでしょう。

さて、ヒアルロン酸パッチ、続けますか・・・?

Dr.RITSUKO(朽木 律子)

美容皮膚科医、『美肌道』コスメ開発者。医師として初めて化粧品成分検定1級を取得。
美容皮膚科医として、東京の美容クリニックで院長を務める傍ら、長年コスメ開発に勤しむ。確かな知識に基づいた厳選成分、ドクターズコスメの限界を攻める超高濃度なコスメを、丁寧に時間をかけて開発している。

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